二十億光年の孤独
途方もない数字が好きだ。億・兆・京。想像もできないほど大きな数字が好き。細胞の数、宇宙、スパコン、自分一人じゃ作りだすことのできない大きな数字、大きな力。そこにロマンを感じてる。
何かのBL漫画雑誌で読んだ短編に、こんな会話があった。
「じゃあ、俺は二十億光年の孤独だ」
「谷川俊太郎かよ」
「誰それ?」
「知らないで言ったの?」
もう、雑誌のタイトルも、漫画のタイトルも、作者も忘れちゃったし、会話はニュアンス。でも、こんな会話だったと思う。
この場面が、私には素晴らしく思え、作者のセンスを感じた。
学生の頃、教科書に載っていた谷川俊太郎の詩。合唱で歌った谷川俊太郎の詩。その名前を出すことで、この空間が一気にノスタルジックになる。わたしにはもう戻れない、大人でもない・子どもでもない、どうしようもなく苦しくて、だけど輝かしくて、どうにもならない想いを抱えたあの頃を思い出させる。
全てが敵に思えた、誰かに寄り添ってもらいたかった、あの時。
二十億光年の孤独。
二十億光年の孤独 谷川俊太郎
人類は小さな球の上で
眠り起きそして働き
ときどき火星に仲間を欲しがったりする
火星人は小さな球の上で
何をしてるか 僕は知らない
(或いは ネリリし キルルし ハララしているか)
しかしときどき地球に仲間を欲しがったりする
それはまったくたしかなことだ
万有引力とは
ひき合う孤独の力である
宇宙はひずんでいる
それ故みんなはもとめ合う
宇宙はどんどん膨らんでゆく
それ故みんなは不安である
二十億光年の孤独に
僕は思わずくしゃみをした
- 作者: 谷川俊太郎,川村和夫,W.I.エリオット
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2008/02/20
- メディア: 文庫
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